富士山が世界遺産に登録されたのは信仰と芸術の源泉という観点からであった。
富士山は『信仰の対象であり、芸術創作の源泉である』のだ。
富士山は、その美しさと雄大さから、たくさんの芸術家の対象となってきたが、代表的な芸術家が葛飾北斎(かつしかほくさい)だ。
アメリカの雑誌『ライフ』で「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人としてただ1人選ばれたのが江戸時代後期の芸術家、葛飾北斎(かつしかほくさい)であった。
北斎の代表作に「富嶽三十六景」がある。
富嶽(ふがく)とは富士山の別名で富岳とか冨嶽という漢字を使うこともある。
富嶽三十六景はその名のとおり、富士山をいろんな場所や構図で描いた連作で、江戸時代後期に大人気となったシリーズ。
そのシリーズは日本のみならず世界的にも有名で、西洋の画家にも影響を与えたという。2020年から日本のパスポートのデザインも富嶽三十六景になるようで、まさに日本を代表するデザイン画である。
誰もが知っている北斎の富嶽三十六景をみてみたい!
富嶽三十六景の中で特に有名なのが、グレート・ウェーブこと神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)や凱風快晴(がいふうかいせい)。
※凱風とは夏の初めに南から吹くさわやかな風のこと。
ということで「没後170年記念 北斎 ―富士への道」を観に太田記念美術館(東京・原宿)へ行ってきた。
会期:2019年4月4日(木)~5月26日(日)
前期 4月4日(木)~4月29日(月・祝)
後期 5月3日(金・祝)~5月26日(日)
前後期で全点展示替えとのこと!
前期に神奈川沖浪裏や凱風快晴が出ていれば、見逃したら見れないのではないか!と思い、前期が終わる間際の4/28に行くことに。
東京・原宿のラフォーレ原宿の裏口の目の前にある太田記念美術館は都心でも数少ない浮世絵専門の美術館。
1F,2F,B1Fに展示室のある小さな美術館だ。
1Fの扉を開けると右側にロッカー、目の前に受付がある。原宿で葛飾北斎展ということもあり、お客さんは若い人や外国人(西洋人)も多い。ゴールデンウィークではあったが、列ができるほどの混み具合ではなかった。受付で一般1000円を支払い、すぐ右の1F展示室へ。
作品保護のため、かなり暗くなっている。1F中央には灯篭などが配置された庭があり、入って左は一段高くなった畳。靴を脱いでの鑑賞となる。
順路の1~6番目の作品が畳からの鑑賞作品。
その中央にいきなり目にとびこんできた~!
グレートウェーブ!
思ったより小さい…
「大判」とのことだけどB4くらいか。
版画だから当然木の板を使う。固い桜の木の板が使われることが多かったようだが、木の大きさの制限もあるから、西洋画のような1m以上あるような巨大なものには成りえないか、と納得。
まじまじと見たい衝動を抑えつつ1番目からみる。
どうやらこの面の6作品はすべて富嶽三十六景のようだ。
- 富嶽三十六景 相州梅澤左(そうしゅううめざわのひだり)
- 富嶽三十六景 青山圎枩(あおやまえんざまつ)
- 富嶽三十六景 山下白雨(さんかはくう)
- 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)
- 富嶽三十六景 甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)
- 富嶽三十六景 江戶日本橋(えどにほんばし)
1. 富嶽三十六景 相州梅澤左
1番目、すごいいい感じのブルーで描かれた版画(^^)
相州梅澤左(そうしゅううめざわのひだり)と書かれているが、神奈川県の大磯から小田原の間にある梅沢庄の書き間違いではないかともいわれている。小田原からは箱根の影に隠れて富士山は見えない。大磯からも高麗山があり見えないが、東海道を大磯から小田原へ進むと「浅間神社」あるように富士山の雄大な姿が見えるところがある。中でも海沿いから突然見える富士山には感動する。梅沢庄(二宮町)は大磯と小田原の間にあるで人馬の休息所であった。
それにしてもきれいなプルシアンブルーの青だ。
北斎は日本古来の藍ではなく、西洋から輸入した青を使い、それまで表現できなかった豊かな青で空や水を表現したという。
畳ごしに見るのもなかなかいいものだが、飾ってある高さが自分には少し低く、またそんなに大きい作品ではないので、よくみるには少しかがむようにしなければならない。
それでも初めてみる本物の感慨の方が大きかった。
2. 富嶽三十六景 青山圎枩(あおやまえんざまつ)
圎枩は、原宿村の龍巌寺(神宮前2丁目)境内にあった名木『笠松』、またの名を『円座の松』のこと。松の木が笠のように中央が高くなっていたと思われる。松の木の枝を支えるように柱がたくさん立てられていたのだろう。
『江戸名所図会』にも取り上げられる名所で、北斎は、円座の松の山の三角と富士山の三角を対比するような構図で描いている。歌川広重(「竜巌寺円座の松」)も描いている。
龍巌寺は勢揃坂(せいぞろいざか)の途中にある臨済宗の禅寺で、檀家さん以外は中には入れないようで、松は今はもうないようだが、今度行ってみたい。
3. 富嶽三十六景 山下白雨(さんかはくう)
富士山頂は晴れているが、ふもとでは雨が降り、雷がなっている様子が描かれている。画面右下のオレンジは噴火した地割れして噴出したマグマのようでもあるが、かなりデザイン化された雷のようだ。青空と雷の対比がおもしろい作品。ブラタモリで紹介されていたが、富士山は雷の多いところで、雷が間近に観測できる山頂の観測所では、現在でも観測している。
4.富嶽三十六景 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)
有名なグレートウェーブ!
北斎展は第1章の20代の北斎から晩年まで年代を追って作品をみることができるが、この波が描かれるまでに何度か同じような波の形が表現されてることに気づく。それにしても、すごい構図だとあらためて思う。
5.富嶽三十六景 甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)
三島越えとは富士吉田から御殿場を通り三島へ抜けることとのこと。
6.富嶽三十六景 江戶日本橋(えどにほんばし)
北斎のみならず、他の絵師も何度も描いている日本橋。日本橋の向こうには江戸城、そして富士が描かれている。
この6作品のあと順路に従うと、1Fの展示室には20代の頃の作品から2Fの展示室へ、そしてB1Fの展示室へと進む。
富嶽三十六景だけでなく、そのあとに描かれた富嶽100景も展示されている。
最後にパスポートに印刷される北斎の見本が展示されていた。
かっこいい!
日本人でよかったと思えるかっこよさ。
外国に行く際に北斎のグレートウェーブに押してもらいたい!